そもそも、麻酔にはどんな種類があるの?

ペンギン
ペンギン

CEぼん!前回、麻酔は「眠る薬」だけじゃないって話でしたよね。

CEぼん
CEぼん

うん。意識、痛み、体の動き、全身状態を分けて考えるんだったね。

ペンギン
ペンギン

じゃあ、手術をするときは、みんな全身麻酔になるんですか?

CEぼん
CEぼん

実は、そうとは限らないよ。手術の場所や内容によって、麻酔の方法は変わるんだ。


CEぼんの一言

麻酔の種類を考えるとき、いきなり薬の名前から入ると難しく感じます。

まずは、

「体のどこまで麻酔を効かせたいのか」

で考えると、かなり分かりやすくなります。


この記事でわかること


麻酔は「どこまで効かせるか」で考える

麻酔には、いくつかの種類があります。

でも、最初から名前を全部覚えようとしなくて大丈夫です。

まずは、こう考えてみてください。

麻酔は、体のどこまで痛みや刺激を感じにくくしたいかによって、方法が変わる。

たとえば、指先の小さな処置なら、指の周りだけ痛みを感じにくくできればよいかもしれません。

お腹の大きな手術なら、意識や呼吸、全身状態までしっかり管理する必要があるかもしれません。

足の手術なら、下半身だけ痛みを感じにくくする方法が選ばれることもあります。

ポイント

麻酔は「強い・弱い」だけで決まるものではありません。

どこを、どのくらい、どんな目的で麻酔するか

によって、方法が変わります。

局所麻酔、区域麻酔、全身麻酔を効く範囲で比較したイラスト

局所麻酔:一部分だけ痛みを感じにくくする

局所麻酔は、体の一部分だけに麻酔を効かせる方法です。

たとえば、

などで使われることがあります。

局所麻酔では、基本的に意識はあります。

患者さんは起きたままですが、処置をする場所の痛みを感じにくくします。

局所麻酔

体の一部分だけをしびれさせる麻酔です。

意識はあるまま、処置をする場所の痛みを感じにくくします。

局所麻酔は、「全身を眠らせなくても安全にできる処置」で選ばれることがあります。

ただし、起きている状態なので、音や引っ張られる感じ、触られている感覚が残る場合があります。

ここで大事なのは、

痛みがないことと、何も感じないことは同じではない

という点です。

患者さんへ

局所麻酔では、痛みは抑えられていても、押される感じや引っ張られる感じが残ることがあります。

「痛い」と「触られている感じがする」は違います。

ただし、強い痛みや不安があるときは、我慢せずスタッフに伝えてください。


区域麻酔:広い範囲をまとめて麻酔する

区域麻酔は、体の一部分よりも広い範囲を麻酔する方法です。

区域麻酔と局所麻酔の違い

「区域」という言葉のとおり、ある範囲の痛みをまとめて感じにくくします。

代表的なものには、

などがあります。

脊髄くも膜下麻酔

脊髄くも膜下麻酔は、腰のあたりから麻酔薬を入れて、主に下半身の痛みを感じにくくする方法です。

帝王切開などで用いられることがあります。

下半身の感覚や動きが、一時的に弱くなることがあります。

横向きに丸まった女性患者の腰から麻酔薬を入れ、下半身に麻酔が効くことを示した脊髄くも膜下麻酔のイラスト

硬膜外麻酔

硬膜外麻酔は、背中から硬膜外腔に細い管を入れ、その管から麻酔薬を使う方法です。

薬を追加したり持続的に投与したりできるため、手術中だけでなく、手術後の痛みを和らげる目的で使われることもあります。

麻酔薬は、管を入れた位置を中心として、その周辺に広がります。

横向きの女性患者の背中から硬膜外腔へ細い管を入れ、挿入部周辺に麻酔が効くことを示した硬膜外麻酔のイラスト

神経ブロック

神経ブロックは、特定の神経の近くに麻酔薬を入れて、その神経が担当する範囲の痛みを感じにくくする方法です。

腕や足の手術などで使われることがあります。

神経の近くに麻酔薬を入れ、腕や足の一定範囲に麻酔を効かせる神経ブロックのイラスト
区域麻酔

体の一部よりも広い範囲を麻酔する方法です。

脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔、神経ブロックなどが含まれます。

CEぼんの例え

電気のブレーカーをイメージしてみてください。

部屋の電気を1つだけ消すのが「局所麻酔」だとすると、ある部屋全体、あるいは一つのエリアの電気をまとめて切るようなイメージが「区域麻酔」です。

もちろん、実際の体はブレーカーほど単純ではありません。

でも、「どの範囲の感覚を抑えたいのか」で考えると、局所麻酔との違いが見えやすくなります。


全身麻酔:意識も含めて全身を管理する

全身麻酔は、薬を使って意識のない状態をつくり、手術中の痛みや体の反応をコントロールする方法です。

大きな手術や、体を動かさないことが重要な手術、呼吸や全身状態の管理が必要な手術などで使われます。

ここで大切なのは、前回の話です。

全身麻酔は、

ただ眠らせるだけではありません。

意識、痛み、体の動き、呼吸や血圧などの全身状態を見ながら、手術を安全に進められるように管理します。

全身麻酔

薬によって意識のない状態をつくり、手術中の痛みや体の反応をコントロールしながら、全身状態を管理する麻酔です。

全身麻酔では、手術内容によって、呼吸を助けるための器具を使うことがあります。

人工呼吸器や麻酔器が関わってくるのも、この全身麻酔の話で出てきます。

ポイント

全身麻酔は「眠る麻酔」ではなく、

意識も含めて全身を管理する麻酔

と考えると分かりやすくなります。

全身麻酔で意識、痛み、体の動き、呼吸や血圧を管理するイラスト

鎮静:リラックスして処置を受けやすくする

麻酔の話では、「鎮静」という言葉もよく出てきます。

鎮静は、患者さんの不安や緊張を和らげたり、眠気を出したりして、処置を受けやすくする方法です。

内視鏡検査や、局所麻酔・区域麻酔と組み合わせて使われることがあります。

ただし、鎮静は全身麻酔とまったく同じではありません。

鎮静の深さには幅があります。

少しぼーっとする程度の場合もあれば、かなり眠っているように見える場合もあります。

鎮静

不安や緊張を和らげ、眠気を出して処置を受けやすくする方法です。

全身麻酔と同じではなく、深さには幅があります。

ここは混同しやすいところ

「眠っているように見える」からといって、すべてが全身麻酔というわけではありません。

鎮静、全身麻酔、局所麻酔、区域麻酔は、それぞれ目的や管理の方法が違います。


麻酔方法はどうやって決まるの?

麻酔方法は、患者さんが自由に一つだけ選んで決めるものではありません。

もちろん、患者さんの希望や不安も大切です。

でも実際には、手術内容や患者さんの状態を見ながら、総合的に判断されます。

たとえば、

などです。

同じ「足の手術」でも、手術内容や患者さんの状態によって、麻酔方法が変わることがあります。

現場では

麻酔方法は、手術名だけで機械的に決まるわけではありません。

同じ手術でも、患者さんの年齢、体力、持病、内服薬、手術時間、術後の痛みの予想などによって、考え方が変わります。

だから、手術前の問診や説明はとても大切です。

患者さんへ

「どの麻酔になりますか?」と気になるときは、説明のときに遠慮なく聞いて大丈夫です。

そのときは、

  • 眠る麻酔ですか?
  • 起きたままですか?
  • 痛みはどう抑えますか?
  • 手術後の痛み対策はありますか?

と聞くと、自分が受ける麻酔をイメージしやすくなります。


まとめ

今回は、麻酔の種類について見てきました。

大切なのは、麻酔を「全身麻酔か、それ以外か」だけで考えないことです。

麻酔には、いろいろな方法があります。

でも、どの方法も目的は同じです。

患者さんが安全に、できるだけ苦痛を少なく手術や処置を受けられるようにすること。

そのために、手術の内容や患者さんの状態に合わせて、麻酔方法が選ばれます。


CEぼんの締め

麻酔の種類は、名前だけを見ると少し難しく感じます。

でも、

「どこまで麻酔を効かせたいのか」

で考えると、かなり整理しやすくなります。

小さな範囲なら局所麻酔。

広い範囲なら区域麻酔。

意識や呼吸も含めて管理が必要なら全身麻酔。

そして、不安や緊張を和らげるために、鎮静を組み合わせることもあります。

薬の名前を覚える前に、

なぜその麻酔方法が選ばれるのか

を考えることが、麻酔を理解する近道です。


考えてみよう

もし、手の小さな傷を縫うだけなら、全身麻酔は必要でしょうか?

では、お腹を大きく開く手術ならどうでしょう?

同じ「手術」でも、必要な麻酔が変わるのはなぜでしょうか?

次回は、いよいよ

全身麻酔とは何をしているのか

を見ていきます。


次回予告

第3章「全身麻酔とは? ~実は3種類の薬を組み合わせています~」

全身麻酔と聞くと、「眠る麻酔」と思うかもしれません。

でも実際には、催眠・鎮痛・筋弛緩など、複数の役割を組み合わせて行われます。

次回は、全身麻酔の中身を、もう少し詳しく見ていきます。